取引先の商習慣が争点に。一年半の税務調査で是認を勝ち取った事例

Case gallery

New

  • 顧問契約

取引先の商習慣が争点に。一年半の税務調査で是認を勝ち取った事例

相談内容

ご相談前に抱えていたお悩み

 

海外の富裕層向けに、日本ならではのコレクターズアイテムを輸出するビジネスを展開されていています。創業は今からおよそ15年ほど前ですが、海外での根強い需要に加え、競合する企業が比較的少ないこともあり、順調に売上を伸ばしてきました。

 

このクライアント様は毎月数千万円にものぼる消費税還付を受けていました。日本では輸出取引に当たる販売について消費税が免除されるため、輸出業者は売上に応じて支払った消費税の還付を受けることができるのです(内国消費税は外国で消費されるモノやサービスには課税されません)。

一方で輸出還付申請を行う輸出関連業は、税務調査の重点業種として常に税務署や国税局の調査対象となります。特に高額な還付申請をしている企業の場合、いつ大規模な税務調査を受けてもおかしくありません。このクライアント様も、ビジネスが順調に拡大すればするほど税務調査のハードルが上がるとして、税務の相談先ができる専門家の必要性を痛感しておられました。

効果と今後の展望

具体的なご相談内容

顧問契約後、約15年が経過したところで税務調査が入りました。ちょうど売上も大きく拡大していた段階ということもあり、この税務調査は事業年度を越して、1年半にわたり論点が解決されないほど大規模なものとなりました。

調査が長引く一番の要因となったのは、このクライアント様自身の問題ではなく「取引相手の商習慣」に由来する問題です。世界には、自国内のお金が海外に流れることを嫌う国が少なくありません(外貨の国外移転が厳しく取り締まられ、支払元には高額な手数料が課されます)。このためこうした国の企業が海外と取り引きする場合、当事者が直接お金を支払うのではなく、複数の会社を経由し複雑なフローで支払を行うケースがあります。

今回もまさにこのパターンでした。「商品の送り先」と「お金の払込元」が異なる、つまり取引先とは別の名義で入金が行われていたために、税務署から「別の取り引きの支払いではないか」との疑いをかけられたのです。クライアント様にはなんの落ち度も違反行為もありませんが、完全に相手側の問題に巻き込まれてしまいました。

とはいえ別名義での入金は長期間にわたり金額も膨大です。こうなると輸出した商品の売上と入金をすべて紐付けることは事実上不可能で、このままでは数千万円規模の追徴課税や加算税の対象となってしまいます。早急に何らかの対策が必要でした。

 

顧問としての取り組みと効果

 

今回の税務調査が入るずっと以前から、年間億単位にものぼる消費税の還付が税務署や国税局の目を引くことはわかっていました。もちろん、クライアント様が成長段階に入るタイミングで難しい税務調査が入ることも予測済みです。

 

このため当事務所としては、いつ税務調査に入られても対応できるように、日々の経理処理からしっかりとアドバイスするよう心がけていました。また国税時代の経験に基づいて、クライアント様との打ち合わせの中で「ミニ税務調査」のようなシミュレーションを何度も繰り返してきました。これにより、まずはベースとなる売上と入金管理をしっかり把握でき、社長様にも税務調査への心構えを持っていただけていたと思います。

 

事前準備は可能な限り行っていましたので、次は税務署の指摘に反論するために、売上と入金の紐付けを可能な限り試みました。具体的に行ったのは「入金の日付と金額の相関関係」を明らかにすることです。その結果、売上先と支払元の名義は一致しないものの、両者に強い相関関係が類推され、それが証拠論点として認められました。

 

「入金の日付と金額の相関関係」のようなデータは、日頃からしっかりした経理処理をしていなければ集まるものではありません。もちろんデータのねつ造などは論外です。あくまで事実としての証拠があったからこそ、調査によってそれを集めることができました。

 

証拠を揃えて相手を納得させるというのは裁判の手順と同じですが、税務調査でも多かれ少なかれ必要になります。もし証拠を示すことができなければ、たとえ(売上と入金が一致しているという)事実があっても税務調査では負けです。結果として。税務署が主張するまま数千万円の追徴課税を支払うことになります。

 

今回の税務調査では幸いなことに、こちらの主張がほぼ是認される形で決着しました。とはいえ仮に別の企業で同じ事実関係があったとしても、是認・否認どちらに転んでも不思議ではありません。このようにグレーゾーンで互いの主張を争う場合では、証拠に加えて「証拠を主張する力量」も必要だからです。

 

国税出身で国側の視点を持っている当事務所だからこそ、国税が主張する内容を先読みし、短期間のうちに反論を組み立てることができました。

 

今後の展望

日本文化は海外で高い評価を受けています。今後も繰り返しブームが発生し、日本のコレクターズアイテムの需要は高まっていくでしょう。大規模な税務調査を無事に切り抜けたクライアント様ですが、今後はさらなる売上拡大を見据えた対策が必要です。


もちろん、今までのような経理処理の徹底や密な打ち合わせは欠かせません。そのうえで積極的な節税対策やリスク回避の対策、たとえば関連会社や持ち株会社の設立といった組織変更や、クライアント様のニーズを十分に満たす保険商品の活用などをご提案できればと考えています。

 

事務所より

創業間もない頃からの長年のお付き合い、大変ありがとうございます。大きな税務調査が入るリスクについて日頃から共感いただき、しっかりと準備を進めていただいたおかげで、大規模なキャッシュフローの悪化といったダメージを受けずに調査を乗り切ることができました。

また今後の新しい課題として、企業規模拡大に伴う「税務顧問の域を超えたサポート」をリクエストいただけたこと、非常に嬉しく思っております。今後も私たちの経験と組織力を存分に発揮し、御社のビジネスの益々の発展をサポートしてゆく所存です。引き続きよろしくお願いいたします。

高橋税理士事務所を選んだ理由

顧問契約のきっかけ


実はこのクライアント様と当事務所は創業時からのお付き合いになります。当初は決算報告などの年一サービス(スポットサービス)を依頼したいということで、まずホームページ経由でご相談いただきました
しかしその後、社長様から将来の展望などについてお伺いしているうちにだんだんと「年一契約で済むようなレベルのビジネス規模ではない」ことがわかってきました。社長様ご自身も事業をさらに拡大していくという自信がおありでしたので、そうなると消費税の還付がビジネスの大きなポイントになること、税務調査に向けて本格的な対策を行う必要があることが明らかになりました。


当事務所の代表は国税出身ということで、消費税の還付に対する税務調査のポイントや取り組むべき対策についてのコンサルティングに長けています。この点が、一般的な税理士事務所ではなく「高橋彰税理士事務所」と顧問契約をしていただく決め手となりました。

日本国内から海外への輸出事業